1.2 相続手続きの期限
実は、相続手続きはいつまでに完了させなければならないといった期限はありません。
相続手続きをまったく進めなくても法的には何も罰則等はありません。
ただし、相続税をはじめとした期限が存在する手続きもあります。
ここでは相続手続きにおける期限がある手続きのうち、重要なものを挙げます。
1.相続の開始を知った時から3ヶ月以内 ・・・ 限定承認または相続放棄の申述
相続人は、相続財産について「単純承認」「限定承認」「相続放棄」の3つの中から選択することができます。
これらのうち、「限定承認」と「相続放棄」を選択したい場合には、相続の開始を知った時から3ヶ月以内に家庭裁判所に申述しなければなりません。
まず、「単純承認」とは、プラスの財産もマイナスの財産もすべて相続するということです。
基本的な相続のかたちであり、「限定承認」「相続放棄」のいずれも申述を行わない場合には、3ヶ月の経過とともに単純承認をしたものとみなされます。
従って、単純承認をする場合には必要な手続きはなく、3ヶ月を過ぎれば良いのです。
プラスの財産のほうが多い見込みの場合に選択する方法といえるでしょう。
次に、「限定承認」とは、プラスの財産の限度でマイナスの財産も相続するというものです。
借金等のマイナスの財産があったとしても、相続によって得たプラスの財産の額を限度に責任を負えば良いというものです。
相続財産が最終的にプラスになるのかマイナスになるのか、判断が難しい場合に選択すべきものといえます。
一見すると便利そうですが、現実にはほとんど利用されていません。
司法統計による平成24年度の限定承認の新受件数は833件で、死亡者数の0.06%程度です。
理由として、家庭裁判所への申述を相続人全員で行わなければならないことが挙げられます。
最後に、「相続放棄」とは、相続する権利の一切を放棄し、プラスの財産もマイナスの財産も相続しないという意思表示です。
相続放棄をすると、はじめから相続人であるとはみなされなくなります。
限定承認と比較するとかなり多く、平成24年度では169,300件も利用されています。
相続放棄も限定承認と同様に家庭裁判所への申述が必要ですが、こちらは個人ごとに行うことができることが理由でしょうか。
マイナスの財産のほうが多い場合や、そもそも相続に巻き込まれたくないような時に利用すべきといえます。
ただし、ただ単にマイナスの財産が多いからといって相続放棄を選択することができるかというと、難しい問題です。
現実的には借金等が多くても何も相続しないわけにはいかない状況もありえますので慎重に決定する必要があります。
また、相続の開始を知った時から3ヶ月以内にこれらの判断をすることが難しい場合には、期間の伸長の申立を行うことで期間を伸ばしてもらえる場合があります。
2.相続の開始の翌日から4ヶ月以内 ・・・ 準確定申告
準確定申告とは、亡くなった人すなわち被相続人の確定申告のことです。
被相続人に確定申告が必要な所得がある場合には、相続人が忘れずに確定申告をしなければなりません。
ただし、被相続人が会社勤め等をしていた場合には、会社が行ってくれることもあるようです。
3.相続の開始の翌日から10ヶ月以内 ・・・ 相続税の申告
相続税が課税される相続の割合は全体の4%程度といわれており、実はほとんどの相続では相続税が発生しません。
相続税が課税される場合には、相続の開始の翌日から10ヶ月以内に相続税の申告を行わなければなりません。
従って、相続財産の確定や遺産分割協議等もこの期限までに済ませることが大事です。
準確定申告、相続税の申告は行政書士が行うことができない業務ですが、必要な場合には税理士をご紹介いたしますのでご安心してご相談ください。
また、相続税に関しては平成27年1月1日以降対象が拡大され、今まで以上に相続税の課税される相続は増えると見込まれます。
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